消費欲求(ゼミ第17回)

皆さんいいかがお過ごしでしょうか?最近は肌寒く感じる日もあり、秋の訪れを身をもって感じさせられます。さて、第18回のゼミが9月17日に行われました。前半では先日行われたMRGPの中間報告会を受けての反省と、山田一成・池内裕美(2018)「消費者心理学」第12章から出題された課題の発表が行われました。後半は第13章についてのパワーポイントでの発表と、柴田康順(2018)「心理統計の使い方を学ぶ」の第10章と第13章の発表が行われました。

始めににMRGPの中間報告会を受けて、各研究グループが感じた課題の発表が行われました。山田班では問題意識を明確にすることと、実験内容を意識して問題提起することが課題として挙げられました。早川班では山田班と同様に問題意識を明確にすることと、研究対象である他者を明確にすることなどが挙げられました。渡辺班では先行研究の新鮮さを求めることが挙げられました。秋山班では研究目的が曖昧であることなどが挙げられました。

次に、山田一成・池内裕美(2018)「消費者心理学」第12章の課題の発表が行われました。課題の内容は、「所属集団で使用されるブランドのうち自己確証の目的で所有したブランド、願望集団で使用されたブランドのうち自己願望の目的で使用されたブランドを1グループ1例ずつ挙げる」というものでした。自己確証は、自分に対する他者の評価が自己概念と矛盾しないように保とうとすること、自己高揚は、自己評価をポジティブな方向により高めていきたいと思うことです。まだ、所属集団とは家族や会社のグループなど自分が実際に所属している集団であり、願望集団とは所属したいと志向する憧れの集団のことです。所属集団で使用されるブランドのうち自己確証の目的で所有したブランドの例としては俊足、ダンベル、コピックマーカー、スマホアプリがなどが挙げられました。願望集団で使用されたブランドのうち自己願望の目的で使用されたブランドの例としては著名人が使用した商品、サッカーチームのユニホーム、予備校などが挙げられました。

後半では、始めに、第13章の内容を早川・山田・長谷川が発表しました。発表の内容としては、以下の1~3でした。
1.消費的欲求の社会的相互依存性
消費支出のほぼ全てを必需消費が占める時代から、人々の生活が豊かになったことで自由に裁量して消費できる比率が高まる大量消費社会に移行し、消費的欲求の社会的相互依存性も高まっていきました。それに伴い消費欲求は、機能欲求(商品自体に備わった質への欲求)から非機能欲求へとシフトしていきます。1950年代から60年代にかけて生活の豊さが向上していく時期には、消費水準や消費欲求が他者の消費行動に影響を受けるデモンストレーション効果や、企業のマーケティング活動によって消費欲求が造り出される依存効果が大きくなりました。1970年代から80年代になると生活の豊かさが広がると同時に、消費者の意識に脱物質主義の傾向が芽生え始めます。また、サービス消費が活発になり、人々は人並みより個性化を目指すようになります。こうした消費欲求の変化は、大衆市場から分衆・少衆の市場へと変化を促しました。
2.基本的欲求のヒエラルキー
マズローは私達の行動を動機づける基本的欲求を生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求の5つに分類し、欲求間には一種の序列階層が存在することを指摘しました。また、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求が「欠乏動機」であるのに対し、自己実現欲求は「成長動機」であると位置づけています。ここで理学者のマズローは自己実現欲求を「成長動機」と捉えていますが、社会学者らは「差異動機」とも捉えています。そして消費行動における「差異動機」は、モノを利用することに繋がります。フランスの思想家ボードリヤールは消費行動を動機づけるのはモノの使用価値ではなく、自分を他者と区別する記号であり、差異欲求が消費行動を動機づけると考えています。
3.快楽重視にシフトする消費欲求
消費欲求の分類の一つに実利欲求と快楽欲求というものがあります。実利欲求は商品の機能がもたらす便益を得たい欲求であり、快楽欲求は感動や楽しさや幸せなどの感情をモノ・サービスの消費経験を通じて得たい欲求です。高度経済成長期には実利欲求が優勢でありましたが、豊かになるにつれ快楽欲求が優勢となってきました。また、「社交」「経験」「共有」を伴う消費行動は幸福感に繋がります。シェア経済における消費行動を動機づけているのは、人との関係を求める「関係への欲求」と、幸せを求める「快楽欲求」の両方だといえます。

最後に、「心理統計の使い方を学ぶ」の第10章と第13章の実習を行いました。第10章では分散分析とカイ二乗検定の統計的仮説検定の方法、第13章では分散分析とカイ二乗検定の結果の論文への書き方についての説明がありました。中間報告会での経験を活かして、研究内容をよりブラッシュアップしていきましょう!

中川ゼミのtwitterアカウントはこちら