感覚マーケティング、知覚リスク、所有感に関するレビュー

紅葉が見ごろの季節となってきましたね。近頃は気温も高く、温かい日が続きますが、花粉症の僕にとってはつらい季節です(笑)

さて、11月19日のゼミでは、1班の「ARマーケティングに関連した先行研究の評論」を中心に行いました。

ゼミの冒頭では、4班から出題された課題「実在する景品表示法違反に関連する広告で、消費者に過剰な推論を引き起こさせる事例」の発表が行われました。推論とは、明らかになっていない事柄を推し量って論ずることを指し、例としては、「国産」というキャッチコピーから消費者が「高品質」と判断する事が挙げられます。過剰な推論を引き起こさせた事例として、「加圧式筋肉インナー」があります。この商品のコピーである「着ながら、ボクサー腹」から、消費者は「着るだけで、筋肉がつく」と推論しましたが、実際には「血流を良くし、代謝を上げる」や「姿勢矯正」の効果があるのみで筋肉がつくという科学的根拠はなかったため、平成31年3月に景品表示法違反で規制されました。

続いて、1班による研究内容に関連した理論の評論を行いました。具体的には、「五感」、「知覚リスク」、「AR」についてです。五感についてでは、人間の身体的構造を説明し、そのうえで、「どのようにマーケティングに結び付けられるか」を先行研究によって明らかにしました。

視覚分野では、「視覚的重さ」に着目した点が面白いと思いました。「視覚的重さ」とは、重さの感覚は物理的なものだけではなく、視覚的な重量感知覚をもたらすことが挙げられました(Togawa, Ishii, &Park 2016)。視覚的情報と触覚的情報による影響が加算的に機能する事により、消費者の心的シミュレーションを容易にすると考えられるため、この理論については、先行研究をさらに深堀して、理論を深めていくべきだと思いました。

聴覚分野では、Milliman(1982)による「BGMのテンポが消費者の購買行動に及ぼす影響」の実験では、アップテンポのBGMが流れると移動ペースが速くなることで購入量が減り、スローテンポのBGMが流れると移動ペースが遅くなることで購入量が増えるが、消費者はそのBGMを認知していないということから、聴覚情報は無意識下で処理されているため、消費者の購買行動をコントロールする点で面白いと思いました。

嗅覚分野では、カレールーの陳列場所にカレーの香りを噴霧した場合、通常時よりも売上が上昇した実験から、嗅覚情報においても消費者の購買意向を高めることが明らかになりました。

ARに関する理論では、「知覚リスク」と「所有感」について発表されました。知覚リスクとは、消費者が製品を購買・使用する際、回避したいと考える不安意識の程度のことです。機能面・金銭面・時間面・身体面・心理面・社会面の知覚リスクが説明されましたが、この分野については先行研究が挙げられなかったため、いくつか論文を集める必要があると思いました。例えば、各企業のオンライン市場における「購買前後」での知覚リスクの低減方法などを調べていくのもいいと思います。

所有感とは、事物に対して抱く「自分のものである」という感覚のことを指し、これが高まる要因として、①コントロール感、②自己投資、③知識や親しみやすさがあります。

コントロール感(人、モノや状況などを自分の思い通りにコントロールしているという感覚の程度のこと)の分野では、映画を購入する際、DVD派とダウンロードする派で議論しました。結論としては感じ方には個人差があるという事でしたが、「どのような人がどちらの媒体を好むのか」など、個人差の傾向を見るのも面白いと思いました。

改善点としては、「発表前に研究内容の概略図を提示する事」や「資料の出所を明記する事」、「重量感を測る尺度の選定」が意見されました。本番のMRGPに向けて、小さなところから修正して、完成度を高めていきたいと思います!

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