ブランドロイヤルティ(ゼミ第8回目)

梅雨に入りじめじめとした暑さが続いていますが皆さんいかがお過ごしでしょうか?緊急事態宣言が解除されたこともあり外出をする人が増えましたね。

さて、第8回中川ゼミが6月11日にオンラインにて行われました。

前半は、山田一成・池内祐美(2018)「消費者心理学」の第5章から出題された課題の発表と第6章の発表が行われ、後半ではHuyghe et al. (2017) について議論を行いました。

第5章の課題では各グループがそれぞれスポーツブランドについての連想ネットワークを作るというものでした。この課題ではグループ内で質問者と回答者分かれその質問の回答に合わせて連想ネットワークを作りました。ある班はナイキについての連想ネットワークを作り、ナイキから連想するものとして象徴的なロゴがあり、またスポーツ選手他にもファッションアイテムとしてのナイキの商品を連想していました。他のグループでも特定のスポーツブランドから連想されるロゴや、イメージなどについて詳しく連想ネットワークを作ることができていたので良かったです。

第6章の発表ではまず、ブランドロイヤルティ、ブランド・パーソナリティについての説明がありました。ブランドロイヤルティとは消費者が特定のブランドに対して抱く「愛着や信頼」の事であり、ブランド・パーソナリティとはあるブランドから連想される人間的特徴の事です。例えば、スターバックスのブランド・パーソナリティは、コーヒー、落ち着いた、おしゃれ、インスタグラムなどが挙げられます。続いて関与の説明がありました。関与とは、ある対象が個人の意識空間に占める重要度の事です。関与には特定の製品カテゴリーに関する関与を表す製品関与、特定のブランドに対する関与を表すブランド関与、特定の広告に対する関与を表す広告関与など様々な種類があります。そして関与には、消費者自身のメリットが最大になるようなブランドを入手しようとする状態の認知的動機とブランドに対する感情的な関連性が強まる状態の感情的動機が存在することが分かりました。

ゼミの後半では、Huyghe, E., Verstraeten, J., Geuens, M., & Van Kerckhove, A. (2017). “Clicks as a Healthy Alternative to Bricks: How Online Grocery Shopping Reduces Vice Purchases.” Journal of Marketing Research, 54 (1), 61-74 の論文について議論を行いました。Huyghe et al. (2017) は、オンラインショッピングとオフラインショッピングのそれぞれを用いた場合に起こる悪徳商品(≒不健康な商品)の購買についての違いについて書かれています。この論文では、研究が4つ行われており、それぞれについて見ていきました。

研究1ではオンラインショッピングを行う人、オフラインショッピングを行う人、その両方を行う人がそれぞれ悪徳商品をどれくらい購入するのか研究をしています。イギリスの小売業(恐らくテスコ)の購買データで分析されました。特にオンラインショッピングとオフラインショッピングの両方で購入する人を対象として、説明変数はオンライン or オフライン、被説明変数は悪徳商品の購買金額です。同じ消費者の購買が複数存在するデータのため、階層性を持つデータを解析する際に用いられるマルチレベル分析(上位の階層は消費者、下位の階層は購買機会)で分散分析が行われました。その結果、オフラインの方がオンラインよりも悪徳商品の購買金額が高いということが明らかになりました。しかしながら、研究1では実際の買い物データを用いているため強い外的妥当性は高いものの(だからこそ)、課題も5つ存在していました。第一に、悪徳商品として検討した商品カテゴリーは5カテゴリーでしたが、実際の悪徳カテゴリーはもっと幅広く存在することです。第二に、(オンラインと違って)オフラインでは、店舗のBGM、食品サンプルなどが購買結果に影響を与えた可能性がありますが、研究1では考慮することはできていません。第三に、顧客がオンラインショッピングを行う理由が買い物の動機とは異なる可能性があることです。第四に、オンラインとオフラインでは、購入してから消費するまでの時間が異なることです。第五に、オンラインとオフラインの環境での商品の露出の違いが結果に影響を与えた可能性があることです。

そこで研究2では、消費者が食料品を購入した場合の悪徳商品が相対的に少ないかどうかについて、オンラインとオフラインの実験室実験が行なわれました。説明変数はオンライン or オフライン、被説明変数は購買した悪徳商品の消費指数です。ここでは商品提示モードの違いがちゃんと伝わっているかどうかに関するマニピュレーションチェックがおこなわれました(これは研究1の購買データの分析ではできない実験室実験の利点です)。実験室実験の結果、実験室実験においてもオンラインショッピングの方がオフラインショッピングよりも、購買した悪徳商品指数は低いことが明らかになりました。

研究3ではオンラインショッピングとオフラインショッピングにおける悪徳商品の購買の差は商品の提示モードが関係しているという仮説について、ショッピングチャネルと商品提示モードによる2要因が購買した悪徳商品指数に与える影響についての実験が行われました。説明変数がオンライン or オフライン、および象徴的表現 or 物理的表現、被説明変数は購買した悪徳商品指数です。実験の結果、ショッピングチャネルの主効果および相互作用効果は確認されませんでしたが、商品提示モードの主効果は有意となりました。すなわち、オンラインかオフラインかということが重要なのではなく、物理的表現の方が象徴的表現よりも、購買した悪徳商品指数が高くなることが明らかになりました。

研究4では「商品の鮮度」と「消費者の即興性」の媒介効果に注目し、ショッピングチャネル間で比較を行いました。説明変数はオンライン or オフライン、被説明変数は購買した悪徳商品指数、媒介変数は「商品の鮮度」と「消費者の即興性」です。調査の結果、「消費者の即興性」の間接効果は確認されました。「商品の鮮度」の間接効果については、購買チャネル→商品の鮮度のパスは有意となりましたが、商品の鮮度→購買した悪徳商品指数のパスは有意ではありませんでした。

このように、今回は研究1~4について学びました。具体的には、研究1の最後にまだそれでも解決されていない課題を列挙し、研究2~4につなげていく方法を学びました。加えて、研究2~4でどのような実験室実験について、手順や実験結果の書き方について学びました。時間切れになってしまったため、次回も Huyghe et al. (2017) の残りについて、学んでいきます。

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