消費者の意思決定(ゼミ第9回目)

最近は、蒸し暑い気候が続いており、すっかり半袖で過ごすようになりましたが、皆さんどうお過ごしでしょうか。

さて、第9回中川ゼミでは、前半に課題発表と教科書学習、後半に論文についての議論を行いました。

まず、はじめに、先週の課題である「食品を対象とするブランドパーソナリティのアンケート調査」を発表グループごとに発表しました。アンケート調査では、Aaker(1997)の42項目の尺度を使用し、5件法で定量調査を行うべきでしたが、一部のグループで誤った方法での調査がみられました。この課題については、来週(6/25)に修正を加えて、再度発表を行います。

次に、山田・池内(2018)の教科書を用いて、消費者の意思決定について学びました。冒頭では、ジャム実験やチョコレート実験の概要が説明され、それに伴い、「商品の選択肢は少ないほど、消費者はより快適に感じるのではないか」というテーマで議論されました。ゼミ生の多くはこの意見を支持しましたが、一方で「タイム・プレッシャーにより、選択肢が少ない方が良いと感じるのであって、基本的には選択肢が充実している方を消費者は好むのではないか」という意見もありました。このように、商品の提示量が消費者の購買意欲に与える影響について研究するのも面白いかなと思いました。

ここで、講義で取り扱った、消費者の意思決定方略について記述します。

 

非補償型意思決定ルールには、以下の方略があります。

  • ①逐次消去型:合格基準に達していないものを除外する方法
  • ②辞書編纂型:合格基準に達しているものを残していく方法
  • ③連結型:複数の合格基準をすべて満たした最初の選択肢を採用する方法
  • ④分離型:複数の合格基準のうち1つでもクリアした選択肢があればそれを採用する方法

補償型意思決定ルールには、以下の方略があります。

  • ①単純加算:好ましい評価ポイントの数が最も多いものを採用する方法
  • ②果汁加算型:得点を評価ポイントの重要度で重み付けをし、スコア化する方法

続いて、柴田康順(2018)『心理統計の使い方を学ぶ』(大正大学出版会)を用いて、HADを使ったデータ分布の確認方法を学びました。主に、ヒストグラム、箱ひげ図の出力方法について、6班の指導のもと、実際にExcelを起動して行いました。

また、逆転項目の処理方法や正規分布の判断についても学習しました。分布の正規性の検定では、p値が0.05より小さい場合はそのデータが正規分布ではないことが判断できることを学びました。

最後に、Huyghe, E., Verstraeten, J., Geuens, M., & Van Kerckhove, A.(2017).”Clicks as a Healthy Alternative to Bricks: How Online Grocery Shopping Reduces Vice Purchases.” Journal of Marketing Research, 54 (1), 61-74の論文について議論しました。今回は、総合議論において記述すべき点を学びました。ここで記述すべき点は、①これまでの研究結果のまとめ、②本研究の理論的貢献、③インプリケーション、④研究の限界と今後の課題、です。理論的貢献では、既存の研究と比較して、今回の研究ではどのような点で理論的に新しいのかを記述します。インプリケーションでは、この研究の応用を提言します。この論文では、小売業者、公共政策立案者、市場研究者に対してそれぞれ提言しています。小売業者には、筆者は「オンラインとオフラインで悪徳商品の購入金額がなぜ異なるかを知りたい小売業者」に有益な結果だと述べています。これは、大規模小売チェーンが肥満率に貢献しているという批判を打ち消す絶好の機会になるからです。公共政策立案者に対しては、この研究における「オフラインからオンラインへ買い物チャネルを整えるだけで、悪徳商品の購買を抑制する」という結果が、肥満を抑制することに繋がると提言しています。研究者に対しては、調査で消費者の態度を測定する際、絵などの象徴的な表示方法に頼ることが多いです。しかしながら、この研究では、消費者の態度は実際の商品に遭遇した時の態度とは異なるということが示唆されてます。研究の限界と今後の課題では、実験を通してどんな事が明らかになったのか、また、何が明らかにならずに今後議論を進めていくべきかを記述するべきことを学びました。

いよいよ7月2日からは大学内での対面でのゼミが予定されています。ゼミの本格始動後から、ゼミ生同士が実際に顔合わせするのは初の機会になるので、期待が高まりますね。その翌週(7/9)には、研究グループの中間報告会があるので、気を引き締めて臨みたいと思います!

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