推論、プライミング効果、初頭・新近性効果についてのレビュー

金木犀も散ってしまい、いよいよ冬が近づいてきたと感じる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。10月22日のゼミでは、インゼミ4班が主体となっての研究内容に関連した理論のレビューを行いました。具体的には推論、プライミング効果、初頭効果、新近性効果についてです。

初めに推論について発表が行われました。推論とは、福田(2010)によると、消費者に必要とされている特定の情報が欠如している際、その場で利用可能な情報をもとに観測不可能な属性の評価値について推測することであり、つまりは利用可能な情報から足りない情報を推測するということです。例を挙げると、パソコンの購入を検討している際、A社が15万、B社が10万円だとしたら、価格が高いA社のほうが高品質なのではと消費者が思うことが推論です。

4班の研究には推論の一つである帰納推論も使われるため、これについての説明もありました。帰納推論とは、田中(2008)によると、特定の事例や情報から一般的法則性や、普遍的命題を導こうとするもので、複数の具体的事実から共通項を導き出して、結論(推論)に持っていくというものです。例えば、Aさんは、今朝テレビを見ていて番組ではちみつがいいと報道していた。同僚のBさんが毎朝はちみつを摂取していて体調がよくなったと言っていた。雑誌の中ではちみつが体にいいと紹介されていた。これら3つの事実と仮定という共通項から、Aさんははちみつが体に良いと推論しました。これに関して事実があるから推論ではないのではという質問が出ました。これは事実は含まれていますが、Aさんにとって足りない情報を他の3つの共通項から推測しているので、推論となります。

次にプライミング効果について発表しました。プライミング効果とは、川口(1998)によると、相互に関連した刺激が継続的に提示されると、先行の刺激によって後続処理が促進されるという現象です。プライミング効果には2つあり、①連想によるプライミング、あるいは意味的プライミングと呼ばれる現象と、②同一刺激を比較的長時間において提示した場合に後続処理に影響を与える現象があります。①は、Mayer et al(1975)の行なった実験によると、BUTTERとNURSEといった無関連単語対を継続的に提示されたときよりも、DOCTORとNURSEといった意味的関連単語対を継続提示されたときのほうが単語の認知が速く正確になるといったものです。もう一つの②は被験者にある単語を提示して見せたり、その単語に対して何らかの判断(例:好悪判断など)を行わせてから、単語完成課題(例:AP_ _E→APPLE)を行わせます。APPLEという単語が初めの判断課題で提示されたものであれば、初めて提示された単語よりも単語完成課題の成績が良いというものです。①は継続提示される2つの刺激が同一ではないという意味から間接プライミングと、②は同じ刺激を2回提示することから、反復プライミングとも呼ばれます。

最後に初頭効果と新近性効果について発表しました。この2つは系列位置効果の一つで、単語をリスト形式で提示し、その後に単語を再生させると提示順によって単語の再生されやすさが変わるというのが系列位置効果です。初頭効果は、最初に提示される情報が強く記憶に残りやすいことで、新近性効果は、最後に提示される情報が記憶に残りやすいことです。真ん中は基本的に再生率は低くなります。

初頭効果に関する実験では、Asch,S.E.(1946)によると最初にポジティブな形容詞(例:知的、勤勉など)、最後にネガティブな形容詞(例:頑固、嫉妬深いなど)を持ってきた場合と、最初にネガティブな形容詞、最後にポジティブな形容詞を持ってきた場合を比べると、前者のほうは好印象、後者のほうは悪い印象になったという結果が出ました。このように形容詞の順番を入れ替えただけなのに、人は最初に提示された印象に影響されてしまうのが初頭効果です。初頭効果が消失する場合もあり、単語の提示速度が速い場合は復唱する回数が少なくなるために、初頭効果は消失してしまいます。(市川・伊藤(認知科学における心理実験))

新近性効果に関する実験では、N.H.Anderson(1976)によると、模擬裁判を行い、弁護側と証言側に分かれ、それぞれに6つずつ証言を与えました。さらにAグループとBグループに分かれ、Aグループは2証言ずつを交互に言い、Bグループは片方が一度に6証言を言った後、もう片方が6証言するというものでした。結果は、どちらも最後に証言したほうが勝利しました。このように、人は最後に与えられた情報に左右されやすいのが新近性効果です。新近性効果も消失する場合があり、記憶させたものを再生させる前に、暗算などの注意をそらす課題を入れると新近性効果が失われます(市川・伊藤『認知科学における心理実験』)。さらに、Krosnick&Alwin(1987)、Sudman at al.(1996)らの論文によると、視覚的に提示された情報は初頭効果が生じやすく、聴覚的に提示された情報は新近性効果が生じやすいことも分かっています。

発表などにおいても、最初に発表した人や最後に発表した人は、記憶に残っているなと思いました。ただし、印象に残る発表をした場合、真ん中に発表しても聞いている人の記憶に残りやすいなと感じます。逆につまらない発表をした場合は、最初であれ最後であれ、記憶には残りにくいと感じます。

次回11月5日はいよいよ1年生のゼミ面接です。去年の今頃私もとても緊張していました。志望理由だけは言えるように練習していた記憶があります。どんな1年生が来てくれるのか今から楽しみです。

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